自民党総裁選の「議論低調」はなぜ？東京一極集中是正へ、地方創生に新味と戦略はあるか

Photo by Pho Tomass on Pexels

先の自民党総裁選を振り返ると、日本の構造的な課題である「東京一極集中の是正」や「地方創生」に関する議論が、どうにも低調だったという印象は拭えません。多くのメディアが指摘するように、その議論には新味や具体的な戦略が欠く、あるいは「是正策が見えない」という厳しい見方がなされていました。しかし、この現状を単に嘆くだけでは何も始まりません。地域活性化に携わる者として、私はこの「低調」の裏側にある本質的な課題と、それでも地方で奮闘し、着実に成果を上げている現場の光に目を向けたいと思います。

なぜ「新味」と「戦略」が欠けるのか？

「地方創生」という言葉は、もはや国民的な共通認識となりつつあります。しかし、その実態は、多くの地域で画一的な施策の繰り返しに終始し、真の意味での地域特性を活かした新味ある取り組みや、長期的な視点に立った戦略が見えにくいのが現状です。これは、政策立案者が現場の細やかなニーズや潜在的な可能性を見過ごし、大きな枠組みに囚われがちであることに起因しているのかもしれません。

特に「東京一極集中」という根深い構造を是正するためには、単なる予算配分やオフィス移転といった対症療法だけでは不十分です。地方が自律的に発展していくための「稼ぐ力」をどう育むか、若者が定着し、魅力的なキャリアを築ける環境をどう整備するかといった、根本的な問いへの答えが自民党総裁選の議論からはあまり聞こえてきませんでした。結果として、「是正策が見えない」という評価が下されるのも無理からぬことと言えるでしょう。

地方創生を成功に導く３つの視点：現場から生まれる「新味と戦略」

政治の舞台で議論低調だったとしても、地方の現場では、地域に根差した人々が知恵を絞り、情熱を傾けて新たな価値を創造しています。彼らが実践し、成果を上げている取り組みには、いくつかの共通する視点があります。

1. 地域の「独自性」を徹底的に深掘りする

画一的な観光地開発や産業誘致ではなく、その地域にしかない歴史、文化、自然、伝統技術、そして人々のつながりを徹底的に深掘りし、磨き上げることが成功の鍵です。例えば、かつて衰退産業と見なされていた地場産業を、最新の技術やデザインと融合させてブランド価値を高めたり、地域の食文化を核とした体験型コンテンツを開発したりする動きがあります。これは、単なる「特産品」ではなく、地域全体の「物語」を売るという新味ある戦略です。

2. 「関係人口」の創出と育成に注力する

人口減少に直面する地方にとって、移住者（定住人口）の獲得は容易ではありません。そこで重要になるのが、地域と多様な形で関わる人々、すなわち「関係人口」を増やす視点です。短期的な観光客だけでなく、リモートワークを通じた副業、ワーケーション、地域プロジェクトへの参加、ふるさと納税を通じた応援など、様々な接点を通じて地域に愛着を持つ人々を増やし、最終的に定住や事業創出へと繋げていく戦略です。彼らは地域に新たな視点やスキルをもたらし、地域の活力を高める原動力となります。

3. デジタル技術と地域住民の「熱意」を融合させる

DX（デジタルトランスフォーメーション）は地方創生においても不可欠な要素です。しかし、単に最新技術を導入するだけでは意味がありません。デジタル技術を、地域住民の「こんな地域にしたい」という強い熱意やアイデアと融合させることが肝要です。例えば、地域の課題を解決するための市民参加型プラットフォームを構築したり、地域資源を効果的にプロモーションするためのデジタルマーケティングに住民自身が関わったりする事例は、テクノロジーと人間の力が相乗効果を生み出す新味ある戦略と言えます。

「議論低調」を超えて、地方の可能性を信じる

自民党総裁選における「東京一極集中是正」や「地方創生」の議論低調は、中央政界が抱える課題を浮き彫りにしました。しかし、地方の現場では、確かな新味と具体的な戦略を持って、未来を切り開こうとする人々の情熱が息づいています。

私たちに必要なのは、画一的な視点から脱却し、それぞれの地域が持つユニークな価値を最大限に引き出すことです。そして、そこに暮らす人々が「自分たちの地域はもっと良くなる」と信じ、行動できるような環境を整えること。そうすることで、表面的な「議論低調」を超え、真に持続可能な地方創生が実現し、「東京一極集中の是正策が見えない」という現状を打破できると確信しています。

地方の可能性を信じ、共に未来を創造していくことこそが、今、最も求められている新味ある戦略ではないでしょうか。