愛媛・双海灘町『はしご酒』が示す、持続可能な地域活性化の秘訣:なぜ17回も成功し、20店舗を集めるのか

地域活性化の取り組みは、日本全国で多岐にわたりますが、その多くが一過性のブームで終わってしまう課題を抱えています。そんな中、愛媛県・双海灘町(現在の双海町)で開催される地域活性化イベント「双海灘町横丁はしご酒」が、第17回目を迎え、過去最多となる20店舗が出店するというニュースは、私たち地域活性化に携わる者にとって、大きな希望と学びを与えてくれます。
私は地域活性化を専門とするコンサルタントとして、この取り組みが「なぜこれほどまでに成功し、継続できているのか」、そして「他の地域でも応用できるヒントは何か」という視点から、その魅力と戦略を深く分析していきます。
「双海灘町横丁はしご酒」成功の多角的要因
地域イベントが第17回という長期にわたって開催され、さらに規模を拡大していることは、並大抵のことではありません。そこには、明確な戦略と、地域住民や関係者の情熱が息づいています。
1. 持続性という最大の成果:第17回開催の重み
まず注目すべきは、その継続性です。単発で終わることなく、毎年開催され続けていること自体が、イベントの信頼性と地域への定着度を物語っています。長年にわたる開催は、地元住民にとっての恒例行事となり、開催を心待ちにする期待感を醸成します。また、参加店舗にとっても、毎年参加することで運営ノウハウが蓄積され、イベントの質が向上していく好循環を生み出しています。
2. 規模の拡大と魅力の向上:過去最多20店舗、松山の人気店も初参加
今回の「双海灘町横丁はしご酒」では、過去最多の20店舗が出店。この数字は、イベントが年々その魅力を増している証拠です。特に注目すべきは、松山の人気店も初参加したという点です。これは、単に地元の魅力に留まらず、地域外からの注目と評価が高まっていることを示唆します。外部の人気店を巻き込むことで、イベントのブランド価値が向上し、より広範囲からの集客を可能にします。参加者にとっても、地元のお店に加え、普段なかなか訪れる機会のない人気店の味を楽しめるという付加価値が生まれるのです。
3. 「はしご酒」という体験型コンセプトの魅力
「はしご酒」というコンセプト自体が、イベントの成功に大きく貢献しています。単一の場所で飲食するだけでなく、複数の店舗を巡ることで、参加者は地域全体を「体験」することができます。これは、地元のお店同士の連携を促し、地域経済全体への波及効果を生み出します。また、新しいお店や人との出会いは、非日常的な楽しさを提供し、参加者の満足度を高めます。
他地域への応用ヒント:成功への鍵
「双海灘町横丁はしご酒」の成功は、他の地域が直面する課題に対する具体的なヒントに満ちています。
1. 地域主体の「情熱」と「持続的なコミットメント」
どのような地域活性化イベントも、最終的にはそれを企画・運営する人々の情熱と、継続的な努力にかかっています。双海灘町の事例は、一過性の補助金頼みではなく、地域住民や商工会などが主体となり、長年にわたってイベントを育ててきた証拠です。成功体験を積み重ね、小さな成功を大きな自信に変えていく粘り強さが不可欠です。
2. 地域内外の「連携」を強化する戦略
松山の人気店が初参加したように、地域外の魅力的な要素を積極的に取り入れることは、イベントの集客力とブランド力を飛躍的に向上させます。地域内の協力体制はもちろんのこと、周辺地域や都市部の事業者との連携を模索することで、新たな顧客層の開拓や、メディア露出の機会を増やすことができます。
3. 「体験」をデザインするイベント企画
現代の消費者は、単なる「モノ」や「サービス」だけでなく、「体験」を求めています。「はしご酒」のように、地域を巡り、多様な出会いを楽しむという体験型のイベントは、参加者に強い印象を残し、再訪や口コミに繋がりやすくなります。地域の特色や資源を活かした、ユニークな体験をいかにデザインするかが鍵となります。
4. 小さな成功を重ねる「段階的な成長戦略」
第17回という回数が示すように、「双海灘町横丁はしご酒」は最初から完璧だったわけではないでしょう。毎年改善を重ね、少しずつ規模を拡大し、参加者や店舗からのフィードバックを活かしてきたはずです。一足飛びに大きな成功を狙うのではなく、小さな成功を積み重ねながら、イベントを育てていく視点が重要です。
まとめ:地域活性化の「生きた教科書」
愛媛県・双海灘町で開催される「双海灘町横丁はしご酒」は、単なる飲食イベントではありません。それは、地域が抱える課題に対し、持続的な努力、戦略的な連携、そして何よりも地域の人々の情熱をもって立ち向かう、地域活性化の「生きた教科書」であると言えるでしょう。
この成功事例は、全国の地域が地方創生に取り組む上で、大きな希望と具体的なヒントを与えてくれます。地域ならではの魅力を掘り起こし、それを体験型のイベントとして昇華させること。そして、何よりも継続する力を持ち続けること。双海灘町の挑戦から、私たちは多くのことを学ぶことができるはずです。
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